レアアースはスマートフォンや電気自動車、風力発電など、現代のデジタル社会に欠かせない資源です。
一方で「地下資源である以上、いつか掘り尽くされて枯渇するのではないか」と不安に思う人も多いかもしれません。
結論から言うと、レアアースは短期的に物理的枯渇が起きる状況ではありません。
ただし、問題がないわけでもありません。
課題は「枯渇」ではなく、供給構造と循環の難しさにあります。
レアアースは人工的に作れない資源
まず前提として、レアアースは元素(原子そのもの)です。
元素を人工的に作るには、原子核反応(核融合・核分裂)が必要になります。
理論上は生成できるとされていますが、
- 莫大なエネルギーが必要
- コストが極端に高い
- 放射性物質の管理が必要
といった理由から、人工的な生産は現実的ではありません。
そのため、レアアースは地球が形成されたときに存在していた分を使い続けるしかない資源となります。
仮にネオジム(Nd)を人工的に作ろうとすると、1gあたり100京円(1兆円の100万倍)以上かかると考えられます。このため、人工ネオジムを使った製品は私たち消費者が購入できるものではないどころか、国家や研究機関ですら扱えない「理論上の存在」になってしまいます。
使い続けて枯渇はしないのか?
ここで重要なのが、実際の埋蔵量と消費量の関係です。
アメリカ地質調査所(USGS)のデータによると、
- 世界のレアアース確認埋蔵量は 約1.3億トン以上
- 現在の年間消費量は 数十万トン規模
単純計算では、数百年以上分の埋蔵量が存在します。
このため少なくとも現時点では、地下資源そのものを掘り尽くしてしまう「物理的枯渇」は、差し迫った問題ではない というのが国際的な共通認識です。
参考:U.S. Geological Survey – Rare Earths Statistics and Information
https://www.usgs.gov/centers/national-minerals-information-center/rare-earths-statistics-and-information
現在の課題は「枯渇」ではなく「供給不足」
現在におけるレアアースの最大リスクは地下資源の枯渇問題ではなく、
- 採掘
- 精製
- 加工
これらの多くが中国に集中していることです。
デジタル機器やEVに必須の資源を、ほぼ一国が担っている状況は、地政学的・経済的に見て非常に不安定です。
問題は「地球上に存在するか」ではなく「安定して手に入るか」にあります。
レアアースはリサイクル可能な資源なのか?
レアアースは元素であり、使用しても燃えて消えるわけではありません。
そのため理論上は、
- 使用
- 回収
- 分離
- 再利用
が 100%近い効率で循環すれば、理論上は地下資源を掘らなくても使い続けることが可能です。
この意味で、レアアースは石油のような「一度使えば終わりの資源」とは性質が違います。
しかし現実には「循環できない」
問題は、存在量ではなく循環の難しさです。
レアアースは「混ざった状態」で使われている
レアアースは多くの場合、
- 磁石
- 合金
- 電子部品
の中に微量ずつ複雑に混ざった状態で使われています。
例) ネオジム磁石
- ネオジム
- ジスプロシウム
- 鉄
- ホウ素
強力な磁石として有名なネオジム磁石は、上記のものが原子レベルで結合した結晶構造をしています。
これを元素ごとに再分離するのは、非常に高度な化学プロセスを必要とします。
分離技術は「存在する」が「高い」
重要なのは、分離技術が「全く存在しない」わけではないという点です。
実際には、
- 溶媒抽出法
- イオン交換
- 高温処理
などの技術は、研究・実用の両面で存在します。
しかし問題は、
結果として、新しく掘って精製した方が圧倒的に安いという状況が長く続いてきました。
「中国から安く買えた」ことが最大の要因
レアアースの分離・リサイクル技術が発展しなかった最大の理由はここにあります。
つまり、技術がなかったのではなく、必要とされなかったというのが実態です。
この構造は国際機関のレポートでも明確に指摘されています。
参考:IEA「Critical Minerals and Clean Energy Transitions」
https://www.iea.org/reports/the-role-of-critical-minerals-in-clean-energy-transitions
近年、状況は変わりつつある
近年は、
- 中国の輸出規制
- 地政学リスクの高まり
- EV・再生可能エネルギー需要の急増
により、「安く買える前提」が崩れ始めました。
この結果、日本・EU・アメリカを中心に、都市鉱山・リサイクル技術への投資が再評価されています。
まとめ
- レアアースは元素であり人工的な生産は現実的ではない
- 現時点で地下資源の物理的枯渇は差し迫っていない
- 問題は「枯渇」ではなく「供給の偏り」と「循環の難しさ」
- 分離・リサイクル技術は存在するが、経済合理性がなかった
- 近年は供給リスクの高まりにより、状況が変わりつつある
レアアースは今すぐに枯渇が問題視されるものではありません。
現在の課題は資源量ではなく、それを使い続けるための仕組みが不安定な部分です。
供給を支える構造を変えていかなければ、私たちは「あるのに足りない」という状態に直面するかもしれません。
