冬になると、浴室や脱衣所が異常に寒く感じることがあります。
「寒すぎてシャワーに入るのが億劫…」と感じている方も多いのではないでしょうか。
実は、浴室や脱衣所の寒さは、断熱性能だけで決まるものではありません。
住宅の換気システムの種類によって、冬の体感温度は大きく変わります。
この記事では、第一種換気と第三種換気を中心に、
- 換気方式の違いによってなぜ寒さに差が出るのか
- それぞれのメリット・デメリット
- 導入や維持にかかる費用
- 節電効果はどの程度期待できるのか
といった点を、できるだけ具体的な数字と仕組みを交えて解説していきます。
「浴室・脱衣所の寒さをどうにかしたい」と対策法を考えている方や、これから住宅の換気方式を検討する方にとって、判断材料になる内容となっています。
換気システムによっては浴室温度は外と同じ
冬の浴室が寒いかどうかは、断熱性能だけでなく換気システムの影響が非常に大きいです。
特に、浴室・脱衣所は換気の影響を最も強く受ける場所でもあります。
ここでは、代表的な3つの換気方式と寒さの関係を整理します。
第三種換気:浴室が最も寒くなりやすい
日本の住宅で最も多いのが第三種換気です。
- 浴室・トイレ・脱衣所から機械(ファン)で排気
- 外気は給気口や隙間から自然に流入
冬に起こること
- 排気し続けることで浴室内は常に負圧
- 冷たい外気が絶えず引き込まれる
- 浴室・脱衣所の空気は外気温に近づきやすい
脱衣所の換気扇が24時間回っているタイプの住宅は第三種換気にあたり、壁が断熱施工されていても寒いという状態が起こります。
第二種換気:浴室にはほぼ使われない
第二種換気は、
- 機械(ファン)で給気
- 穴から自然排気
という方式ですが、クリーンルームや病院向けであり、一般住宅ではほとんど使われません。
第一種換気:寒さを感じにくい
第一種換気は、
- 給気・排気ともに機械制御
- 多くの場合、熱交換器付き
という方式です。
冬に起こること
- 外気をそのまま入れず、室内の熱を回収
- 冷たい空気が直接浴室に入らない
その結果、浴室・脱衣所とリビングの温度差が小さくなりやすいというメリットがあります。
ネット上で「高断熱+第一種換気だと浴室が寒くない」と書かれているのは、このためです。
換気システムを後から変更するのは難しい
ここまで読んで、「第一種換気にすれば寒くなりにくいのでは?」と思った方もいるかもしれません。
考え方としては間違っていませんが、換気システムは後から変更するのが非常に難しい設備でもあります。
換気は家全体の構造に組み込まれている
換気システムは、
- 天井裏・壁の中のダクト配管
- 給気口・排気口の位置
- 電源・制御方法
など、家全体の設計と一体化しています。
特に第一種換気+熱交換器は、
- 各部屋へ給気ダクトを通す
- 排気ダクトを設ける
- 熱交換ユニットの設置スペースを確保
このような必要があり、後付けでは大規模な工事になりやすいです。
第三種から第一種への変更は現実的ではない場合が多い
現在第三種換気の住宅を第一種換気へ変更するには、
- 壁や天井を開ける
- 内装をやり直す
- 配管ルートを新たに作る
といった作業が必要になる場合が多いです。
単に「換気扇を交換すればよい」というものではありません。
最初から「第一種換気+高断熱」にすれば良かった?
後から変更できないのなら、家を建てる時・選ぶ時に最初から第一種換気にしておけば良かったのかも・・・そう思うかもしれませんね。
ここで第一種換気と第三種換気のメリット・デメリット、それからかかるコストの違いについて大体の目安を見ていきます。
第三種換気
排気ファン+自然給気口
- 初期費用: 数万円~10万円台
- 年間電気代: 数千円
- 維持費用: 年間5千円~1万2千円
維持費用とは、換気扇を交換した時にかかる費用を耐用年数で割った金額です。
換気扇本体が1~2万円で、工賃が1万円、3箇所の交換を15年で行うことを想定した時、15年目の交換でかかる費用は7~8万円で、年間にすると約5000円ほどかかると考えることができます。
第一種換気+高断熱
給気・排気ファン+制御装置(多くは熱交換器付き)
- 初期費用: 数十万~100万円台
- 年間電気代: 数千円〜1万円前後
- 維持費用: 年間2万~5万円
- 節電効果: 年間1~1.5万円
熱交換換気の修繕コストは年間いくらかかる?
第一種換気で避けて通れないのが、熱交換ユニットとフィルターの維持費です。
一般的な目安として、
- 熱交換ユニットの耐用年数:約15年
- ユニット購入費用:12万~30万円程度
- 交換時の工賃:約1万円
- フィルター交換:年1回・約1万円
と仮定します。
合計して耐用年数で割ると、年間の修繕・維持コストはおよそ2万~3万円程度という計算になります。
※実際の金額は製品グレードや交換頻度、DIY可否によって前後します。
高気密・熱交換による節電効果はどのくらい?
高気密・熱交換になることによる節電効果について見ていきます。
総務省統計などから、4人家族世帯の年間電気代は約15万円前後がひとつの目安です。
このうち、冷房・暖房が占める割合を 30% と仮定すると、
冷暖房費:
15万円 × 30% = 約4万5,000円/年
となります。
北米や欧州の住宅エネルギーモデルでは、熱回収換気(HRV / ERV)を導入すると、
単純な排気換気(第三種換気)と比べて暖房エネルギーが約20~30%削減されるという評価が複数報告されています。
この削減率を先ほどの冷暖房費に当てはめると、年間 約 9,000円~13,500円の節電額が目安となります。
※ただし住宅の気密性能や製品の性能、立地、生活スタイルなどの条件によっても数値は変わるため、参考程度にお考えください。
第一種換気は節電効果で元を取るものではない
第一種換気+高断熱住宅は、「長期的に見れば節電効果でお得になる設備」ではありません。
エアコンなどの冷暖房費の節約にはなりますが、初期費用・設備修繕に大きくお金がかかるため、トータルではコスパがいいとは言えません。
また、お風呂や脱衣所の快適性が必要になるのは、実際は冬の寒い時期のみということが多く、かけた投資分の回収は節電効果のみではほぼ不可能です。
しかし、「空調効率を安定させるための設備」「冬の快適性のための買い物」「健康のための投資」として考えると、納得できる人も多いはずです。
一方で、
- 初期費用を抑えたい
- 維持費を減らしたい
- 冬の寒さは運用や工夫で対応できる
- メンテナンスが楽な方がいい
という人にとっては、第三種換気は今でも十分に合理的な選択肢です。