レアアースは、電気自動車やスマートフォン、風力発電、医療機器など、現代社会を支える重要な資源です。
その一方で、「なぜ特定の国に依存しているのか」 「日本では取れないのか」という疑問を持つ人も多いかと思います。
結論から言うと、日本にもレアアース資源は存在しますが、現時点では本格的な商業生産には至っていません。
そして世界が主要産出国に依存している背景には、資源量だけではない複数の理由があります。
日本ではレアアースは取れないのか?
「日本は資源がない国」と言われがちですが、正確には 「採算が取れる形で大量生産できる資源が少ない」 というのが実情です。
日本にもレアアース資源は存在する
代表的な例が、南鳥島周辺の海底に存在するレアアース泥です。
この海底堆積物には、ネオジムやジスプロシウムなどのレアアースが含まれていることが確認されています。
この発見は、日本がレアアースを「全く持っていない国ではない」ことを示しています。
参考:東京大学・JAMSTEC(海洋研究開発機構)による調査
https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20180410/
なぜ採掘・供給が進まないのか
問題は「あるかどうか」ではなく、実用化できるかどうかです。
日本周辺のレアアース資源には、次のような課題があります。
- 海底数千メートルという極めて過酷な採掘環境
- 採掘・回収・精製にかかるコストの高さ
- 深海生態系への影響など、環境面の不確実性
- 商業採掘の前例がほぼ存在しない技術分野
このため、研究開発は進められているものの、安定的に市場へ供給できる段階には達していないのが現状です。
なぜ世界は主要産出国の中国に依存しているのか?
世界のレアアース供給が特定の国に集中している理由は、単純に「埋蔵量が多いから」だけではありません。
理由① 採掘よりも「精製」が難しい
レアアースは、鉱石を掘ればすぐ使える資源ではありません。
複数の元素が混ざり合って存在するため、分離・精製工程が非常に複雑です。
この工程では、
といった問題があり、環境負荷とコストが高いという特徴があります。
その結果、
「採掘できる国」よりも「精製まで含めて行える国」が限られてきました。
理由② 中国がサプライチェーンを構築してきた歴史
現在、世界のレアアース供給は中国への依存度が高いとされています。
これは偶然ではなく、長期的な国家戦略の結果です。
中国は1980年代以降、
- レアアース産業を国家戦略として育成
- 環境規制が比較的緩い時期に精製能力を拡大
- 採掘から加工・輸出までを一体化した体制を構築
これらを行ってきました。
その結果、現在では世界のレアアース精製の大部分を中国が担っているとされています。
理由③ 他国が採算面・環境面で撤退してきた
かつてはアメリカやオーストラリア、日本でもレアアースの精製が行われていました。
しかし、
といった理由から、多くの国がレアアース産業から撤退していきました。
結果として、
「採算が合う国」「続けられる国」に生産が集中していったのです。
まとめ
- 日本にもレアアース資源は存在するが、商業採掘には高いハードルがある
- レアアースは「採掘」よりも「精製」が難しく、供給国が限られる
- 中国は長年の産業政策によってサプライチェーンを構築してきた
- 世界が主要産出国に依存しているのは、経済・技術・環境の複合的な結果