光について、普段私たちはあまり深く意識することなく、日常に当たり前に存在するものとして受け入れています。
しかしあらためて考えると、
- 光とは何なのか?
- 光はなぜ一定速度で最速なのか?
- なぜ光には重さがないのか?
といった、不思議な疑問が次々と浮かんできます。
今回は、そんな身近でありながら謎の多い「光」が何者なのかを、簡単なところから深いところまで、できるだけ分かりやすく詳しくお伝えしたいと思います。
光とは何か?

光は太陽や電球から発せられるものというイメージですが、発生の原因を詳しく見ていくと、以下のようにさまざまなエネルギーが関わっています。
- 電球の光:電気エネルギーが熱エネルギーを経て光になる
- 太陽の光:核融合によって生まれたエネルギーが光として放出される
- 化学反応による光:炎色反応のように物質の化学変化で余分なエネルギーが光として放出される
つまり光は、エネルギーの形態のひとつであり、他のエネルギーから生み出されたものということです。
エネルギーには様々な種類があります。
- 運動エネルギー
- 位置エネルギー
- 熱エネルギー
- 化学エネルギー
- 核エネルギー
- 電気エネルギー
- 光エネルギー
- 音エネルギー
そしてこれらの様々なエネルギーを、私たち現代人は使いやすいように自由に変換して日々の暮らしに活用しています。
白熱電球: 電気エネルギー → 光エネルギー(+熱エネルギー)
テレビ: 電気エネルギー → 光エネルギー+音エネルギー(+熱エネルギー)
太陽光パネル: 光エネルギー → 電気エネルギー
光は電磁波の一部
私たちが光と呼んでいるのは、「目に見える波長域の電磁波」です。
| 種類 | 備考 |
|---|---|
| 電波 | 通信・放送 |
| マイクロ波 | 電子レンジ・レーダー |
| 赤外線 | 熱放射・リモコン |
| 光(可視光線) | 目に見える波長 |
| 紫外線 | 日光に含まれる |
| X線 | レントゲン |
| ガンマ線 | 放射線 |

これらをまとめて「電磁波」と呼びます。
電波・光・X線などは別物ではなく、電磁波の中の同じ分類のものです。波長の大きさによって特徴が変わり、名前が区分されています。
光でなぜ物が見えるの?

私たちが物を見ることができるのは、物そのものを直接見ているからではありません。
実際には、光を見ているのです。
① 光が物に当たる
太陽や電灯などから出た光が、物体に当たります。
② 光が反射・散乱する
物に当たった光の一部は、はね返ったり(反射)あちこちに散ったり(散乱)します。
③ 反射した光が目に入る
その反射した光が私たちの目に入ることで、脳は「そこに物がある」と判断します。
目は物を見ているのではなく、物から届いた光を見ているのです。
色が見える理由
私たちの身の回りには、赤・緑・青などさまざまな色の光を含んだ光(たとえば太陽光)が存在しています。この光が物体に当たった時、物体はすべての色を同じように反射するわけではありません。
- 物体は、特定の色の光を吸収する
- 吸収されなかった光が反射される
- その反射光を、私たちは「物の色」として認識する
これが、色が見える基本的な仕組みです。
たとえば、
赤いリンゴ・・・赤い光を反射し、緑や青の光を吸収する
緑の葉っぱ・・・緑の光を反射し、赤や青の光を吸収する
黒い物体・・・ほとんどの光を吸収するため暗く見える
白い物体・・・多くの光を反射するため明るく見える
リンゴの皮が赤く見えるのは、皮に含まれる色素「アントシアニン」の働きによるものです。アントシアニンは青や緑の光を吸収しますが、赤い光は吸収しにくいため、その赤い光が反射されます。
葉っぱに含まれる「クロロフィル」は、赤と青の光を吸収し、緑の光を反射します。そのため、葉は緑に見えるのです。
ここで重要なのは、色とは「物体そのものが持つ色」ではなく、
光が物体に当たり反射した光を、私たちの目と脳が受け取ってはじめて色として認識されるものということです。
色は、物体・光・受け手の三者がそろって初めて成立する現象なのです。
そのため、色の見え方は人によって異なりますし、動物によっても大きな違いがあります。
たとえば犬・馬・猫などは赤色の識別が弱く、赤い物体を人間のような「赤」としてではなく、「色味はあるが暗く見える色」として認識しています。
可視光以外が見える生物
人間は可視光線の範囲内を見ることができますが、生き物の中には紫外線や赤外線を見ることができるものもいます。
- ミツバチ: 紫外線が見える→花粉が飛んでいる花が分かる
- ネズミ: 紫外線が見える→紫外線に反射する尿を手がかかりに暗闇でも行動する
- 鳥類: 紫外線が見える→羽の模様が違うように見えて求愛や個体識別に使われる
- 魚類: 紫外線が見える→水中の風景と魚を区別してエサや敵を探知できる
- ヘビ: 赤外線を感じる→ピット器官という温度感知器官を使用し、生物の熱を感じる
空中・水中・夜間での活動を行う動物は、紫外線や赤外線を利用してより多くの情報を得られるように進化してきました。
これらに対して昼に活動する地上の生物は、可視光を見分ける方向性で進化してきました。
- 可視光は地表に最も多く届く
- 紫外線などに頼る必要がほぼない
- 高速動体検知に特化した、捕食・被捕食型の陸上哺乳類
- 色の違いを細かく見分ける能力が発達した霊長類
サル・ヒトなどの霊長類は、果実が完熟なのかの判別や、顔色や健康状態の把握など、色の細かな変化を見分けることで生存戦略に活用してきました。
光はなぜ物体を温めるの?

太陽が当たっている地面や建物は温度が上がって温かくなりますよね。
光が物体を温めるのは、光が持つエネルギーが物質に吸収され、熱に変換されるためです。
物体に当たった光の一部は反射されますが、吸収された光は原子や分子、電子を振動させます。
この振動が物質内部に広がることで、原子や分子の動きが激しくなり温度が上がります。
つまり、光そのものが「熱」になるのではなく、光のエネルギーが物質の運動エネルギーに変わった結果として熱が生じる、という仕組みです。
電磁波で食品を温める電子レンジ
食品を温める電子レンジには、波長が長いマイクロ波が採用されています。
- 水分を効率よく振動させることができる
- 吸収されやすいため食べ物の内部まで振動させられる
- 食品の細胞を直接破壊することがない
赤外線・可視光は食べ物の表面をおもに温めるのに対し、マイクロ波は食べ物の内部まで届いて温めることができるのが特徴です。「水分を効率よく内部まで温めたい」という目的にはマイクロ波が向いているのです。
光の質量は0

光は必ず常に光速で動く存在のため、静止している時の状態を観測することができません。そのため質量が0と定義されています。
でもこれは観測できないから0にしているわけではなく、特殊相対性理論や量子電磁力学(QED)によって理論的に正しいとされているものです。
光があるほうが重い
光には質量がなく重さは0です。
しかしながら、内側を鏡で作った箱の中に光を閉じ込めて天秤で重さを計測すると、光が入った箱の方がわずかに重くなります。
これは光自体に重さがあるのではなく、光が持つエネルギーによって箱の中の総エネルギー量が増えて、その結果が重さとして現れているためです。
箱の中の光は様々な方向に飛散しており、重力方向に一方向のエネルギーがあるわけではありません。それでも、箱内部のエネルギー密度が高くなると、地球に引かれる力は強くなります。
この変化は温度の違いでも同様に考えることができます。
同じ鉄の塊を用意し、一方を熱してもう一方を冷ました場合、内部のエネルギー量が異なるため、熱した鉄のほうがわずかに重くなります。
このように、エネルギー量が多いほど、重さとして振る舞う量も増えるという関係があります。
光は重力によって曲がる

「光は質量を持たないのだから、重力の影響を受けるのはおかしい」と直感的には思ってしまいます。
ですが実際には、光は重力によって曲がることが観測されています。
ここで重要なのは、光は重力に引っ張られているわけではないという点です。
現代物理学、特にアインシュタインの一般相対性理論では、重力とは質量やエネルギーによって空間と時間(時空)が歪むことで現れる現象と説明されます。
空間が歪んでいるため、その中を進む光も曲がって見えるというわけです。
光は媒介不要で進む

海の波は水がなければ伝わらないものです。電気も銅線などの導体を通して伝わります。
それに対して光は空気や水などの媒介なしでも進むことができ、真空や宇宙空間でも進むことができます。
遮るものがない真空状態では光は減衰せずに、どこまでも永遠に進むことができます。
そのため遥か何百光年も離れた遠い星の光も、地球まで到達することが可能となっています。(ただし宇宙空間には塵が漂っているため実際には減衰が起こります)
光の速度は一定
光の速度は真空中で常に一定で、秒速約30万km(正確には 299,792,458 m/s)です。
地球と月の距離が約38万kmなので、光は約1.3秒で月まで到達します。
ただしこの速度が出るのは真空中であって、空中や水中などでは速度が遅く見えることとなります。
| 媒質 | 速度 |
|---|---|
| 真空 | 約30万km/s |
| 空中 | 約29.97万km/s |
| 水中 | 約22.5万km/s |
ここで面白いのは、水中で一度遅くなった光でも、再び真空状態になると約30万km/sの速度を出すということです。
「 真空 → 水 → 真空 」の順で光を通すと、「 約30万km/s → 約22.5万km/s → 約30万km/s 」と再び速度が上がったように見えるのです。
水中で遅くなって見えた光でも、じつは光の粒子(光子)の速度自体は一定で変わっていません。水中では光が水の分子に何度も吸収・再放出されるため、全体として進む時間が長くなり、遅く見えているだけです。
電車に例えると、各駅停車と直通電車の違いに似ています。速度自体は同じでも、各駅停車は停車の時間がある分、目的地到達までに時間がかかります。光も媒質を抜ければ、再び本来の光速で進むのです。
なぜ光の速度は秒速約30万kmなの?
光はなぜ秒速約30万kmなのか?
じつは現代物理学では、この値自体の理由を説明することはできません。
私たちはこの値を「自然定数」として受け入れるしかないのです。
自然定数とは?
自然定数とは、宇宙の基本的性質を表す変わることのない絶対的な数値のことです。場所や時間に関係なくどこでも一定で、物理法則を支える重要な値です。
- 光速 c
- 重力定数 G
- プランク定数 h
- 電子の電荷 e
- アボガドロ数 NA
いずれも一定の値であることは、さまざまな実験で確認されています。
しかし、なぜその数値になるのかを理論で説明することはできません。
そのため、私たちはこれらの数値を決まりきったものとして受け入れています。
時空が定めている最大速度
光エネルギーと同様に、重力エネルギーも空間を歪ませて影響を与えるまでの時間があり、次々と波のように広がっていく様子から「重力波」と呼ばれています。
この重力波が到達するまでの時間と距離から「速度」が導き出せるのですが、これがなんと光と同じ秒速約30万kmなのです。(299,792,458 m/sで光速と一致)
これは実際に起きたブラックホールの合体で観測された数値です。(2015年9月14日アメリカの重力波望遠鏡(LIGO)が観測)
この結果が興味深いのは、「光」とは全く性質の異なる「重力」という現象でさえ、同じ速さでしか影響を伝えられないという点です。
ここから考えられるのは、
光や重力波がそれぞれ固有の能力として同じ速度を持っているのではなく、
影響や情報が “時空(時間を含む空間)” を伝わる速さそのものに上限があるのではないか
という考え方です。
どれほど激しく、どれほど瞬時に起きた出来事であっても、その結果が別の場所に伝わるまでには必ず時間がかかります。そして、その伝播速度の最大値が、約30万km/sなのです。
この視点に立つと、光速とは
「光が頑張って出せる最高速度」ではなく、
時空の構造そのものが定めている制限値だと捉えることができます。
私たちが存在しているこの時空には、原因から結果が連鎖して伝わる最大速度があらかじめ決まっている
そう考えるほうが、観測結果と自然に整合します。
光を基準にした方が正しい?

私たちが日常的に使っている「1秒」や「1メートル」は、もともと人間の生活に身近な現象を基準に定められてきました。
たとえば、1秒は地球の自転をもとに、1メートルは地球の大きさをもとに決められた歴史があります。
これらは生活するうえでは非常に便利ですが、宇宙全体の物理法則を考える尺度として、本当に最適なのかという疑問も残ります。
特殊相対性理論では、時間と空間は別々のものではなく「時空」として一体で扱われます。
このとき、時間と空間を結びつけているのが光速です。
このことを踏まえると、人間の感覚に合わせた尺度を基準にするよりも光速が描く距離や時間の関係を基礎にしたほうが自然法則をそのまま理解しやすいのではないか、と考えることもできます。
プランク長
地球のものをベースとして使わない長さの単位としては、「プランク長」というものがあります。

光速c・重力定数G・プランク定数ℏ と全て自然定数を使って表されます。
プランク長はメートルにすると、
約1.616×10−35 m = 約0.00000000000000000000000000000000001616m
という極めて小さな長さであり、日常生活では使いにくい難点があります。
またサイズが小さすぎるため現在は実験で観測ができません。そのため仮説の域を出ないという慎重な見方がされています。
距離 = 時間
次に見ていくのが、「 距離 = 時間 」という考え方です。
私たちは普段、「光が1秒で約30万km進む」と考えていますが、ここで発想を大きく変えてみます。
「光が距離1だけ進むのにかかる時間を1とする」
という考え方です。
光距離1=光時間1
光距離50=光時間50
光距離100=光時間100
・・・
というように、距離と時間が同じ数で表せるようになります。
この考え方では、距離と時間を無理に別物として扱う必要がなくなり、物理法則をよりシンプルに整理できるようになります。
実際、時間と空間は深く結びついており、空間が歪めば光の到達時間も同様に変化します。
たとえば外からの観測者視点で見た時には、距離と時間の関係がこのようになります。
重力で空間が歪んでAB間の距離が1.2倍になる
↓
AB間を光が通る時間が1.2倍になる
これは単に「距離が長くなったから遅く着く」という計算上の話ではなく、距離と時間の基準そのものが、空間の歪みによって同時に変化しているためです。
距離と時間は別々のものというより「一体となった量」として扱えることが分かります。
さいごに : 光子・光の波が実際にあるわけではない
光は粒子(光子)として説明されることがありますが、これは小さな球が実際に飛んでいるという意味ではありません。光子は物質のような実体をもたず、形や大きさを定義できない存在です。
また、光を”波”として描いた図もよく見られますが、実際に空間をクネクネ蛇行しながら進んでいるわけではありません。
ここで言う”波”とは、電場と磁場がリズムよく変化しながら次々伝わっていく様子を指しています。
しかしながら繰り返しになりますが、光は水や空気のような「物質」ではありません。
形や大きさをもった実体があるわけではなく、物体として存在しているものではないのです。
ここを勘違いして、光の「粒」や「波」を、本当に小さな粒や実際の波が存在しているものだと思ってしまうと、「なぜ光には重さがないのか?」「なぜそんなに速く移動できるのか?」といった疑問が生まれてしまいます。
ですが、熱エネルギーや重力も、目に見えて形のある物体ではありません。
それでも確かに存在し、影響を与えています。
光もそれと同じように、物体ではないエネルギーの一つとして考えると、形がなく重さを持たず物体としての制約を受けないことが、自然に理解できるのではないでしょうか。